ji-pankun

メジロマックイーン

鈍色の恋人たち

 割り箸を割るとき5回に1回くらい、とんでもなく持ちにくい割れ方をする時があって、その度にまあ俺の人生こんなもんだよな、と思うのだけど、よくよく考えれば5回に4回は綺麗に割れているわけで、要は自分の人生に期待しない思考を無意識に設計しているだけなのがちと悲しい。

 ①Wordle、②ナミブ砂漠のライブ映像、③上白石萌歌。この3つを軸として毎日過ごしている。Wordleは毎晩ちまちま、たいがいなんとか正解に辿り着けるのが嬉しくてやっている。YouTubeで生配信しているナミブ砂漠の映像は夜ご飯中テレビで流しているのをぼーっと眺める。ナミブ砂漠にある人工的な水飲み場の風景をえんえん流しているだけなのだが、世界の途方もなさが伝わってきて妙に心地よい。水を飲みに現れる動物。だいたいが鳥とオリックスで、ゼブラも一度見かけたことがある。いちばん嬉しかったのは水飲み場の清掃にスタッフのおじさんが現れたとき。スコップがコンクリートと当たる金属音。聞き覚えのあるその音が自分の知らない地球のどこかで鳴っていて、それをインターネットを通じて世界中の人が観測しているそのスケール感に圧倒され、ぼんやりして、すこし怖くもなる。生きてるだけで流れ込んでくる膨大な情報に立ちくらみしそうになる毎日の中、この映像を観ている間だけすこし時空がぐにゃっとするのが面白い。

 そして3つめ、ここ最近の自分の生活を支えているのは上白石萌歌という存在。彼女を彼女として初めて認識したのは、去年夏に公開となった映画、子供はわかってあげない、だ。映画としてはまあ凡作、といった思いなのだけど、主演である彼女の演技、特に発声に惚れ惚れした記憶がある。映画公開前後、TBSラジオで頻繁に流れたCMから聴こえる彼女の声を生きるよすがにしていた夏がたしかにあった。それからしばらくは特に思い出すことなく生きていたのだけど、決め手は歌手活動としての名義adieuの1月に配信された 灯台より、と言う曲。柴田聡子作詞作曲のこの曲はほんとうにすごい。歌詞の文節や意味をまたぐメロディやリズムの複雑さ多彩さは、そのまま世界の不確かさ分からなさを表す。そんな曲を、小舟に乗りオールで漕いで跳ねるように歌いこなすadieuの歌声。一時期狂ったようにこの曲ばかり聴いていた。ヴィムヴェンダース曽我部恵一が自らの表現を通して描くように、この世界には中年男性の姿をした天使もたしかに存在するが、実は見た目が天使である天使もやはり存在するのだ。

YouTubeに違法アップロードされているインスタライブ動画も全部見たし、写真集も買った。ラジオも毎週聴いてるし、なんならナミブ砂漠ライブ配信もこのラジオで彼女がおすすめしていたもの。今週のラジオでは大学での必修科目を履修し終えた話をしています。すごい!おめでとう!ラブ!